研究概要 |
本研究は,「農業地域の自立的発展に結びつく,イノベーションの連続的生起メカニズム」をIPMを指標に実証的に解明するものであり,研究初年度の本年は,主に以下の2点から研究を進めた。 日本におけるIPM普及の地域的差異の解明日本におけるIPM普及に関しては,まず農林水産省での聞きとり、資料収集によって,西南暖地の諸県での取組の早いことが確認された。それを受けて,IPMに早期から取り組む,西南暖地の諸県と茨城県、愛知県についての調査を県庁等での聞きとり、資料収集,普及現場での観察、聞きとりから行った。また,個人で早期にIPMを導入した,神奈川県の篤農家での聞きとりも行った。これらから,日本におけるIPM普及の大筋,さらに普及センター等の役割も明らかになりつつあるが,その一般化が課題として残された。そのため,次年度は,全県を対象としたアンケート調査を行う予定である。 高知県における普及の地域的差異の実証的研究 IPM普及の先進県として,高知県を選択して,その普及過程について農家を単位として調査を芸西村で行った。初年度の調査であるため,次年度への予備調査的視点も含むものの,IPM導入における地区内キーパーソン,および革新農家,初期導入農家,追随農家に分類することができた。また,導入と採用に関わる技術習得過程(技術の学習の場や情報ネットワークに関する項目も含む)についても調査農家の結果から,普及センターと農協の戦略,研究会組織の役割等について明らかにすることができた。これらの点は,他の諸県での聞きとりや現地での調査からの結果(例えば,茨城県のピーマン産地)とも整合性があり,次年度はこの点を発展させるため,他地域での調査とともに,高知県内でも調査域を拡大する予定である。
|