本研究は、「農業地域の自立的発展に結びつく、イノベーションの連続的生起メカニズム」をIPMを指標に実証的に解明するものであり、昨年度を受けて本年は、主に以下の2点から研究を進めた。 日本におけるIPM普及の地域的差異の解明昨年度までの研究成果とともに、本年度の資料収集とデータ整理、主産県での聞きとり等から日本におけるIPM普及とその地域差に関して、11月の人文地理学会(於、筑波大学)で「日本における病害虫管理(IPM)の地域的普及に関する予察的研究」と題して発表した。そこでは、日本におけるIPMは西南暖地諸県、とりわけ集団的導入は高知県・福岡県などの施設園芸諸県で早く、各県での導入過程をみると地域内に「学ぶあう仕組み」が有るかどうかが普及の鍵であることを指摘した。また、日本のIPM普及に大きな影響を与えているオランダ農業についてその概略を『地理教育講座』で報告するとともに、近年の変化を景観的視点から報告した。同時に、日本へのMPS普及の状況を示した。 高知県における普及の地域的差異の実証的研究昨年度に続き、IPM普及の先進県として、高知県を選択して、その普及過程について農家を単位として調査を芸西村で行った。昨年度は、IPM導入に適したピーマン栽培の農家での調査を行ったが、本年度はピーマン農家とともにナス農家での聞きとりを実施した。その結果、同地区のIPM普及には地域リーダーによる社会的ネットワークに伴う情報の伝達が重要であり、それらリーダーに産地発展をオーガナイズするリーダーと技術革新をもたらすリーダーが有ることが明らかになった。これらの研究成果は2009年3月の日本地理学会(於、帝京大学)で発表した。
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