平成20年度は、平成19年度に収集したオーストラリアの人口移動センサス・データの整理・点検とデータ・ファイル作成を進めるとともに、福井市の非集計人口移動データを用いた距離分析とその総括を中心に行った:(1)オーストラリア人口移動のデータ(1996、2001、2006)は、研究計画に即して、以下のように整理し、データ・ファイルを作成した:全国100余りの統計地域(SD)間、ならびに、各州の州都(キャンベラ、シドニー、メルボルン、パース、アデレイド、ホバート、ダーウィン、ブリスベーン)内部の地方統計区(SLA)間について、センサス調査1年前の住所からセンサス時への住所への移動について、男女別、総数ならびに10年齢階級別に集計したデータを個別に点検しつつ、ファイルを作成した。また、年次ごとに、各地区のコード番号と面積と緯度経度からなるデータ・ファイルを作成し、それを用いて、面積別ヒストグラムと地区間距離(大圏コース)のヒストグラムを計算し、シミュレーション実験の基礎データを得た。(2)福井市の人口移動データ(個票)を福井市内部の移動と福井市の市境を越える移動に分け、年齢による移動距離の変化を分析した。住居移動という空間行動を距離の側面から見ると、年齢による明瞭な変化が存在すること、男女による相違だけでなく、近距離圏(都市内部)と非近距離圏(市域外の地帯)との間で変化パターンが異なることなどが明らかになった。従来の研究では、移動頻度(移動率)の年齢による変化は「移動スケジュール」としてさまざまな研究事例が蓄積されているが、移動空間の伸縮リズムについては研究がほとんど行われておらず、新しい指摘といえる。
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