高コストの大都市圏でクラスターを形成するコンテンツ産業は先進国で経済牽引の役割が期待されているが、多様な主体が参加するプロジェクトベースのビジネスであるコンテンツ産業では、クラスターを前提にいかなる主体によるどのようなリーダーシップによってクリエイティブなダイナミクスが実現されているのか、特に増加している国際コンテンツプロジェクトにおいてはいかなるリーダーシップが国境を越えて異なるクラスターの協働を実現しているのか、未解明な点が多い。本研究は、経営学における「境界連結単位」を、(A)企業の境界から、(B)テクノロジー、アート、マネジメントといった異質な知識分野の境界、(C)近接しながら異なる産業のクラスターの境界、(D)空間的に離れた遠隔の国際的な産業クラスターの間の境界の連結に拡張して「境界連結リーダーシップ」と位置づけ、コンテンツ産業における国際的なクラスター間の協働がいかに行われているかを「境界連結リーダーシップ」に注目して日米欧の具体的な事例の検討を通して明らかにすることを目的とし、初年度の平成19年度には、日本-米国間のクラスター関係に焦点をあてて調査を行った。具体的には、日本と米国の両クラスターをつなぐリーダーシップを発揮している代表的プレーヤーとして、VFXあるいはCGのスーパーバイザー・プロデューサーである日本在住の松野美茂氏を対象に、1年間という長期間にわたる定期調査を実施した。それ以外に、米国在住のアニメプロデューサーの海部正樹氏、アニメプロデューサーのJoseph Chou氏、元ソニーピクチャーズ副社長で現在T&G Picturesの社長を務める松島新氏に対して詳細なヒアリング調査を行った。その結果、日米間の国際コンテンツプロジェクトが直面する課題が明らかになるとともに、そうした課題を克服するリーダーシップの役割について探索的な知見を得ることが出来た。
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