研究概要 |
高コストの大都市圏でクラスターを形成するコンテンツ産業は先進国で経済牽引の役割が期待されるが,多様な主体が参加するプロジェクトベースのビジネスであるコンテンツ産業では,クラスターを前提にいかなる主体によるどのようなリーダーシップによってクリエイティブなダイナミクスが実現されているのか,特に増加している国際コンテンツプロジェクトにおいてはいかなるリーダーシップが国境を越えて異なるクラスターの協働を実現しているのか,未解明な点が多い.本研究は,経営学における「境界連結単位」を,(A)企業の境界から,(B)テクノロジー,アート,マネジメントといった異質な知識分野の境界,(C)近接しながら異なる産業のクラスターの境界,(D)空間的に離れた遠隔の国際的な産業クラスターの間の境界の連結に拡張して「境界連結リーダーシップ」と位置づけ,コンテンツ産業における国際的なクラスター間の協働がいかに行われているかを「境界連結リーダーシップ」に注目して日米欧の具体的な事例の検討を通して明らかにすることを目的とし,2年度の平成20年度には,欧州と米国のクラスター間関係に焦点をあてて調査を行った.具体的には,欧州と米国のクラスターをつなぐリーダーシップを発揮している代表的プレーヤーとして,米国人フリーランスVFXスーパーバイザーのKevin Tod Haug氏を対象に,ロンドンにおいて映画「007慰めの報酬」のポスプロ段階の1週間参与観察を行ってコミュニケーションに関するデータ収集を行い,いかにして参加企業のコーディネートを行っているのかの調査を実施した.また初年度の日米クラスター間関係で取り上げた日本在住の松野美茂氏を対象とした継続調査を行い,1年間追加した長期間のコンタクトアナリシスを実施した.予想しない形で007映画に深く関わる調査が可能になったため,ロンドン調査を予定より長く実施し,当初予定のプラハ調査は3年度目に延期することとした.
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