研究概要 |
高コストの大都市圏でクラスターを形成するコンテンツ産業は先進国で経済牽引の役割が期待されるが,多様な主体が参加するプロジェクトベースのビジネスであるコンテンツ産業では,クラスターを前提にいかなる主体によるどのようなリーダーシップによってクリエイティブなダイナミクスが実現されているのか,特に増加している国際コンテンツプロジェクトにおいてはいかなるリーダーシップが国境を越えて異なるクラスターの協働を実現しているのか,未解明な点が多い.本研究は,経営学における「境界連結単位」を,(A)企業の境界から,(B)テクノロジー,アート,マネジメントといった異質な知識分野の境界,(C)近接しながら異なる産業のクラスターの境界,(D)空間的に離れた遠隔の国際的な産業クラスターの間の境界の連結に拡張して「境界連結リーダーシップ」と位置づけ,コンテンツ産業における国際的なクラスター間の協働がいかに行われているかを「境界連結リーダーシップ」に注目して日米欧の具体的な事例の検討を通して明らかにすることを目的とし,3年度の平成21年度には,カナダと米国のクラスター間関係に焦点をあてて調査を行った.具体的には,カナダと米国のクラスターをつなぐリーダーシップを発揮している代表的プレーヤーとして,モントリオールをベースにFX Cartelというバーチャル企業を組織してハリウッドプロジェクトに柔軟に対応しているVFXプロデューサーのCarole Bouchard氏と,VFXスーパーバイザーのGunnar Hansen氏,さらにFX Cartelに参加のBarXSeven社,Mokko社,Klon社,Fiction Science社の主要スタッフにヒアリングを実施して,コミュニケーションデータを収集し,ハリウッドとカナダの協働の課題は何か,それがいかに克服されているか,ハリウッドとカナダの空間的に離れたクラスターを効果的につなぐ「しくみ」がいかに構築され運営されているかを検討した.
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