研究概要 |
本研究は,香川県東かがわ市を中心に展開する手袋産業を事例として,地方地場産業の生存戦略と海外展開の特徴を,地理学的な観点に立って解明することを目的とした.研究に当たり,既存の文献・統計資料を参照したほか,東かがわ市にある同業者組合事務所や,東かがわ地域に立地し,海外展開を積極的に推進し業界を代表する事例企業において聞き取り調査を実施したほか,事例企業の中国現地法人(工場)を訪ね,実態調査を行った.その結果,事例として取り上げた手袋関連企業は,1世紀以上にわたって培ってきた手袋生産の知識と技術を生かして「地域ブランド」を形成し,日本において揺るぎない地位を確保しつつも,地場での生産にこだわらず,日本企業としては早く1970年代から積極的に生産の場としての海外展開をまず韓国,台湾から開始し,現在では中国が生産現場の中心となっていること,さらに仕入れ・販売拠点を主要な市場の1つである北米およびヨーロッパ地域に設置し,日本の地場との間にグローバルな企業ネットワークを構築していること,また地場では専門的な知識と技術の伝承のための新たなプログラムを立ち上げ,頭脳としての「地場」の維持につとめていることが明らかになった.全体として,東かがわ地域の手袋産業が,柔軟でグローカルな生存戦略を構築し,それを推進することによって,激しさを増す世界市場での競争に打ち勝とうとする姿が浮き彫りにされた
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