本研究の目的は、ドメスティック・スペース(domestic space、家庭空間)、「ホーム」なる空間を、文化地理学的視角から再検討することにある。 初年度にあたる本年度は、まず、理論的検討から着手した。英語圏の文化地理学研究において展開されているホームの地理学に関する先行研究の整理を行うことを通して、社会的政治的な存在としての「ホーム」、想像的表象的なるものであり同時に物質的なるものとしての「ホーム」、の結飾に位置する「ホーム」という視点を明確にすることができた。このことは、近年の文化地理学の潮流(例えば、パフォーマティヴ・アプローチ、マテリアリティへの関心、ポストコロニアルな地理学、感情・情動の地理学)と密接に結びつくものであるので、ドメスティック・スペースという限定された対象を越えたレビューが必要である。学会発表においてその一端(特に、日本社会を対象とした研究への援用)を報告し、論文(雑誌等未公開)を配布した。現在、日本語学術雑誌への投稿するための論文にまとめているところである。このようなレビューは、公/私の二分法に陥らないドメスティック・スペースへのアプローチが低調な日本の地理学において、有益な示唆をもたらすものと予想される。 事例に即した予備的研究として、本年度は、「回想法」に注目して、それが導入されている博物館・資料館などの参与観察を行った。また、「ホーム」や生活が地域活性化のなかで利用されている事例についても資料集を行っている。学会発表で、予察的報告を行った。
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