本研究課題は中国地誌の実践をその主な目的として取り組まれている。第2年度にあたる本年度は、資料収集の基幹をしめるフィールド調査に重点が置かれた。 まず2008年9月5日から18日まで長春・大連において、次に2009年1月3日から12日までアモイにおいて、それぞれフィールド調査を行った。東北の中心都市め一つである長春においては、国営企業主体の在来工業地域が直面する諸問題と東北農村の現状に関する資料を収集した。大連においては、その都市史における日本の位置をめぐる歴史地理に関わる資料を収集した。経済特区のアモイでは、華僑と台湾企業の工業開発に果たしてきた役割と出稼ぎ労働者の状況について資料を収集した。 こうして収集した資料をもとに、地誌の実践が進められている。「研究発表」に掲載した小論は、それぞれ個別の研究文脈にあるが、同時に地誌への指向を明確に持っている。今年度に収集した資料を加えて、より総合的な記述を進めている。 また、こうした地誌の実践の基礎を固める意図を持つ地誌学の再検討については、中国地誌の読み込みと実在論を軸に据えた地域地理学の新展開に関する文献サーベイを続けている。さらに、地誌が本来的に社会に向けられたものであることから、ホームページの作成を進めているが、個別ファイルの次元での整備が進み、公開への道筋が整いつつある。
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