本研究課題は、中国地誌が何を書いてきたのかを検討したうえで、中国地誌を「書く」という実践を通して、地誌の可能性を再考することを目的としている。具体的な研究過程としては、まず日本における中国を対象とした地誌に関して、近代以降の資料を収集し、それらの綿密な読み込みを通して、中国地誌の成果と課題を明確にしてゆくことがあげられる。つぎに、実在論をはじめとして、英語圏地理学において展開されている地誌学の同時代的な議論を整理している。そして、生活空間論的な方法論に立脚したフィールド調査を行い、資料を収集すると同時に、具体的な地誌記述を進めている。こうした研究活動を通して、地誌を学問の伝統から研究の実践に引き戻し、中国認識の変遷を明らかにし、中国地誌を社会に還元してゆく。
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