研究概要 |
本研究の目的は,産業集積地域の概念を,産業集積をめぐる最近の実証的な知見を基にして,再意義することである。なかでも,産業集積をめぐってこれまで考慮されることのなかった生産・知識創造(イノベーション)における「域外連関」をキーワードとして,再定義を試みるということである。この目的解明のために平成19年度は,第1の理論的研究では,上記の目的と視角から,改めて仮説に関する研究更的・理論的整理を行った。生産・知識創造(イノべーション)側面からの産業集積地域に関する研究は近年増加傾向にあること,それが産業集積の新たな形成や再生との関連で行われていることが明らかになる一方で,産業集積地域の概念化に関連した側面(なかでも,域内・域外連関)では注目されていないことが明らかになった。 第2に,仮説の検証に当たる実証面の作業も同時並行的に進めた。これは,この仮説と目的の下で自らの一連の実証研究を検証する作業と,従来の実証的知見では不足している部分における新たな実証研究との2つに分かれる。 仮説検証にあたる部分では,自らが行ってきた一連の研究の再履の作業を進めた,その結果,生産・知識創造(イノベーション)の域外連関と生産や取所の域外連関との間には,明瞭な相関があるケースが多く,前者が産業集積地域の再概念化をする際に有効な指標になりうることが明らかになりつつある。 後者の新たな実証研究では,従来の産業集積地域研究で通常重点を置くことになる「生産連関」に関する項目のフォローが可能であるかどうかの予備調査を実施した。その結果,既存の印刷された資料によるフォローが難しく,デジタルコンテンツ化されたものの集計を自ら実施する方をとらざるを得ないことが明らかになった。したがって,この作業を独自に進めるとともに,次年度はヒアリングおよびアンケート調査も併用する方法でアプローチせざるを得ないことが明らかにされた。
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