研究課題
初年度である本年度は、1990年代以降のモンゴル国における牧畜部門に対する国際援助プログラムの実施状況を把握するため関連資料を収集するとともに、それら国際援助プログラムに影響をあたえうる、モンゴルおよび欧米のモンゴルの牧畜に関する研究論文を収集分析した。それによる成果は、研究協力者としてアメリカ、モンゴル国の研究者と共同でおこなった、科研費事業(基盤研究(A))「モンゴル国の土地法制に関する法社会学的研究〜環境保全と紛争防止の観点から〜」(研究代表:名古屋大学加藤久和)による、「モンゴル国土地法」の実施状況および牧地に対する権利意識についての現地アンケート調査の結果にもとづき共同執筆された論文にふくめられている。また、年度末にモンゴル国に出張をおこない、モンゴル国の研究者と意見交換をおこなうとともに、UNDPプロジェクトの責任者などに面会してインタビューをおこなった。在モンゴル国連代表駐在事務所には、1990年代はじめからの国際援助プログラムやモンゴルの牧畜についての調査報告などを網羅的に収集したライブラリーが存在するので、この出張中それらの資料の閲覧を求めたが受け入れられなかった。本年度の研究調査により、開発援助プロジェクトが実施者側と現場の牧畜民との間の理解のずれをふくみながら実施されている様相があきらかになってきた。例えば、スイス開発協力庁やUNDPが実施したあるいは実施中のプロジェクトでは、あらたな「コミュニティ」としての「牧畜民グループ」を結成し、それを法的主体として牧地を「保有」させることをプロジェクトの目標のおおきな柱としているが、プロジェクト側では「保有」を「排他的使用権」と理解するのに対して、現場の牧畜民はそれをかならずしも「排他的」とは理解していない。このように、本研究により、開発援助プロジェクトの問題の指摘やその一般化が可能となると考えられる。
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CALE News, 名古屋大学法政国際教育協力研究センター 23
ページ: 12-12
CALE Reports, 名古屋大学法政国際教育協力研究センター(WEB版) 1(掲載確定)(印刷中)
ページ: 1-45