研究課題
本研究の目的は、ムスリム・コミュニティにおける「改宗」に焦点をあてることによって、タイ国内のそれぞれ歴史・社会的状況の異なる北部タイ、中部タイ、南部タイの比較を通して、イスラームの教義から本質的に捉えられがちなムスリム・コミュニティの実態を明らかにすることである。平成19年度は、とくにこれまでデータの少なかった北部タイのムスリム・コミュニティの生活実践の中から「改宗」という個人の実践の実態を把握し、ミクロな宗教動態を解明することに勤めた。その方法としては、北タイの中心都市であるチェンマイにおけるムスリム・コミュニティの全体像を把握するために、主要なムスリム集住地域におけるムスリムと仏教徒の通婚の実態について、すべての主要コミュニティにおけるムスリムと仏教徒の混住の状況を把握し、さらに改宗者にインタビューを行った。この結果、チェンマイにおいてはムスリムと仏教徒の婚姻によってかなりの改宗がおこるが、特に仏教徒がムスリムになるという方向で見られることが明らかになった。また、近年のイスラームをめぐるグローバルな影響化にあるイスラーム・ネットワークの実態を捉えるために、北タイのチェンマイと南部タイのサトゥーン県において、ダワと呼ばれるイスラーム復興運動に関与する人々の調査を行った。具体的にはダワ運動を当事者の経験として捉えるためにこの運動に従事する人々へのインタビューと、行政による宗教政策の動向を知るために郡役場における宗教局でのインタビューを行った。その結果、タイにおけるダワの広がりの歴史的な過程やダワ運動の特徴などがあきらかになった。その一部に成果については2008年1月にバンコクで行われた第10回タイ国際学会にて発表を行ったが、引き続き調査を継続してさらにグローバルな動きとミクロな生活実戦における経験を共に視野にいれ、現代における宗教実践についての考察を深めていく予定である。
すべて 2008 2007
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Khamkhopfa 60 Pi Shigeharu Tanabe, Sun Manusawithaya Sirinthon
ページ: 235-258
知識資源の陰と陽(資源人類学3) 3
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