研究概要 |
本研究は中国文化大革命の推移を少数民族のひとつ,モンゴル族の視点から調査し,その民族問題としての側面を解明しようとするものである。まず,当初の予定通りに夏季には内モンゴル自治区西部のオルドス地域において実地調査をおこなった。オルドスは共産党の根拠地とされる延安に近く,同地域出身のモンゴル人幹部たちも「正統な延安派」とされていたが,それでも文化大革命中は例外なく粛清された。研究代表者は,オルドスでもっとも多くの犠牲者を出したウーシン旗において聞き書き調査と文献収集を実施した。 また,冬季には平成19年12月〜平成20年1月、3月に内モンゴル自治区首府のフフホト市と隣接するシリンゴル盟南部において,現地調査を推進した。こちらの方では主として1940年代に「対日協力者」とされたモンゴル人たちを対象に,口伝と文献資料の両方を収集した。文献資料は主として文化大革命当時の各種印刷物(紅衛兵新聞,ビラと伝単など)である。 現地調査で入手した資料を整理し,論文の形で公表した。それにより,従来ほとんど知られていなかった少数民族虐殺の実態が少しずつ明るみになってきた。これは,世界の文化大革命研究に対する新しい貢献と言えよう。
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