本研究は1966年から1976年にかけておこなわれた中国文化大革命の歴史的推移を少数民族の一つ、モンゴル族の視点から現地調査を実施し、文化大革命という政治運動の「民族問題的な側面と性質」を明らかにしようとするものである。中国の少数民族自治地域である内モンゴル自治区の場合、文化大革命運動の深化にともない、少数民族の自治権が剥奪された。また、内モンゴル自治区の固有の領土も約半分が漢族の省に分割され、その上、厳しい軍事管制制度が導入された。1966年から1970年の間、34万人が逮捕され、2万7000人以上ものモンゴル人たちが虐殺され、12万人に障害が残った。当時、モンゴル族の人口はわずか140万人だったことから、全モンゴル族を巻きこんだこの政治的な災禍をモンゴル人たちはジェノサイドだと理解している。本研究は、この隠蔽されつづけているジェノサイドこそ、文化大革命時における少数民族問題の本質だと位置づけている。
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