研究課題
自然認識をめぐる新彊モンゴル族の地域的な特徴を把握することが、今年度の研究目的だった。そこで、文献研究と現地調査を融合させる方法で研究を遂行した。1文献研究:人間と動植物との関係をめぐる社会/文化人類学的な既存研究を踏まえ、マルクスの自然概念などをはじめとする哲学や思想史研究領域の蓄積を批判的にレビューしたうえで、中国西部を含む内陸アジア全域における諸近代国家の開発や環境政策の現在のありようを民族誌的に検討した。2現地調査:夏と春休み期間中、延べ一個月半の現地調査を行い、北京やウルムチなど都市部の研究機関や古文書館で短期文献収集を行った以外、主に牧畜地域で聞き取り調査を実施した。具体的には、(1)バヤンゴール蒙古族自治州・ボルタラー蒙古族自治州・ホボクサイル蒙古族自治県、(2)イリ=カザフ自治州の管轄下にある民族自治権を持たないモンゴル諸地域で調査を行なった。3研究成果:国家の民族政策や開発・環境政策のあり様を探り、新彊モンゴル地域の社会文化的な現状を巨視的に把握した。現地で得た情報を整理し、自然認識の動態を考察するための基礎データ(調査ノート:400字詰め原稿用紙約500枚)を蓄積した。家畜儀礼や土地祀りそして禁忌など慣習の諸「内容」、そらに対する住民の「解釈」にみられる「自然認識」の特徴について、(1)と(2)地域間の共通点と同一地域内部の相違点が確認できた。また、(1)地域では慣習の諸「内容」がモンゴル民族の伝統文化として地方行政府などによって位置づけられやすく、住民の「解釈」も比較的整合性を持つのに対して、(2)地域では必ずしもそうされず、住民の「解釈」も流動的になりやすい傾向を観察することができた。では、民族自治権の有無によって生じる「解釈」の相違が、実践の中で慣習の諸「内容」にどのような影響を及ぼしていくかを考察することを、次年度本格調査の課題としたい。
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『中国研究月報』 3月号 62(3)
ページ: 43-48
『オアシス地域研究会報』 4(1)
ページ: 73-80
Inner Asia, Leiden: Brill
ページ: 337-361
http://www.e-machisite.com/lab/shinjilt.html