19年度に引き続き、近代の婦人雑誌を通覧し、キーワードに従って資料収集・整理を行うこととし、『女学世界』『貴女の友』II期8冊分について、データベース化に向けての作業を行った。作業は膨大な資料を読み込むため、当初計画したデータベース化が遅れ気味である。また、近代の婦人雑誌などの記事の対象とならない、農村の女性たちや漁村の海女などの実態調査のために、日本海側では石川県輪島市海士町の舳倉島を訪れ、聞き取り調査及び文献資料の収集に努めた。しかし、文献資料は意図しているものは少なく、聞き取り調査からも既に明治期の話は伝承としての資料のみで、彼女たちの労働中の衛生観等に関わる資料はなお継続的な調査が必要である。同様に太平洋側の代表的な海女の活動地域である千葉県南房総市千倉町の調査を行ったが、ここでも舳倉島同様、明治期の実態を聞き取り調査することは困難を極めている。ただ、千倉の場合、調査報告書及び活字化した文献資料が存在するので、手がかりはありなお継続的な調査を進めることによって、新たな資料の発見に繋がることは期待できる。また、千倉の場合韓国済州島からの海女が一時期かなりの人数で活動しており、韓国海女との比較をすることにより、技術とともに身体の管理状況に関わる新たな資料が発掘できることが期待できる。こうした婦人雑誌の教育対象からはずれた女性たちの実態調査とそれに関わる文献資料の発掘は、近代の婦人雑誌の特色を把握するためにも必要不可欠な作業であり、21年度も引き続き二つの作業を並行して行って生きたいと考えている。なお、近世の文献はPDF化のために写真撮影がほぼ完了し、解説をつける作業が進められている。
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