研究概要 |
本研究は,スモールスケールマイナー(発展途上国などで,小規模な採掘を展開し生計を立てている人びと)が採掘することで生じている環境破壊への防止意識を高めるたあのプログラムを開発することを目的としている。研究の期間は3年で,本年は初年度にあたる。 初年度の活動は大別して2つあった。1つは,現地資料の収集である。村尾 智は地質学者としての専門知識を用いて,タイ王国とフィリピンでの鉱山開発の状況とスモールスケールマイナーの関わりの事例を整理してきた。鈴木清史は,先進国オーストラリアと途上国インドでの鉱山開発と地域住民に関わる調査を実施した。オーストラリアでの調査は平成19年8月に実施し,インドの調査が行なわれたのは平成20年2月であった。 本年度もう1つの柱は,吉川肇子による既存の教化プログラムの整理とその有効性の検討である。 収集した資料を通して,教育プログラムの導入および住民参加を促進するための要素としては,現地の行政官との関係が重要であることが再確認できた。とくに,2月にタイ政府機関の職員を対象に開催したセミナーでは,既存の教育プログラムを紹介し,現場で働いている職員の反応についての資料収集を試みた。このセミナーに参加したタイ政府の職員の多くは,タイにおいては就学児童、生徒を対象にした教化プログラムにおいてでさえ,現状の政治システムを考慮する必要がある,という指摘がなされた。また同時に国ごと,あるいは地域ごとに明かな文化差にも注視する必要があることが会場で指摘された。つまり,途上国では,日本では意識されることが少ない状況の概念化に関わる教育訓練も必要であることが明らかになった,と思われる。
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