自然資源に乏しい小サンゴ島居住民の居住戦略および資源利用の様相をあきらかにするため、ミクロネシアのファイス島で2005年に行った考古学調査結果の詳しい分析を行った。具体的には、(1)三メートルにもおよぶ深い文化堆積層の層位別、地点別の詳細な年代を決定するために、炭化試料を米国のBeta analyticへ送付してAMSによる年代測定を依頼した。その結果、ファイス島における人間居住は紀元後250年ごろに始まり、継続的に居住が行われたことが明確になった。これは、近隣のサンゴ島ではもっとも古い人間居住の開始年代である。また、細かい層位別の年代値が入手できたことで、近隣の火山島から輸入した土器の変化と組み合わせた文化相の復原も可能になった。輸入土器や家畜の存在を含めた年代別文化相の復原についても、近隣のサンゴ島で初めての試みとなる。1700年以上にわたって資源に乏しいサンゴ島環境に人間が居住を継続してきた背景には、資源に富む火山島との接触が欠かせなかったことがさらに明確になった。(2)サンゴ島にはない石が発拙から出土しており、その鉱物鑑定も行った。その結果、西方のヤップ島に特徴的な安山岩起源の石であることがわかり、ファイス島民が、土器の他に石も持ちかえってきていたことが明らかになった。(3)ファイス島から出土した土器片は、火山島であるファイスで作成された可能性は低く、土器片の鉱物鑑定からは西方のヤップとパラオから輸入したものであることが指摘された。ヤップ島の粘土サンプルと出土した土器片の鉱物比較からは著しい結果は得られなかった。また、パラオ島の粘土サンプルを入手するためパラオで蒐集活動を行った。伝統的に土器を作っていた村から粘土サンプルを入手することが出来たので、その分析は次年度に進める予定である。
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