研究課題
本研究は、ミクロネシア・カロリン諸島の、資源に乏しいサンゴ小島嶼への人類居住と環境適応の変化の様相を明らかにするために行ってきた一連の研究の一部として実施した。発掘調査を行ったファイス島から出土した土器片には、歴史的に交易関係を持っていたヤップ島のものだけではなく、パラオ島で作られたものも混在していることが土器の鉱物鑑定の結果わかっている。そこで、パラオにおける生産地の復原を行う資料とするため、パラオで伝統的土器作りに用いられてきた粘土の鉱物組成および元素分析を行った。Gatpang試料は、石英の鉱物片と珪化凝灰岩の岩石片を主体とする鉱物で構成されるのに対し、Ngermid試料は、石英、斜長石、単斜輝石と粘土鉱物塊を主体とする構成であることがあきらかになった。また、粘土鉱物のX線回析の結果は、前者がカオリナイトが支配的であるのに対し、後者はカオリナイトとスメクタイトが支配的であることを示している。これらの結果は、両資料ともに焼き物作りに用いる粘土としては、ヤップのものよりはるかに高温焼成に適していることを示しており、土器の形成過程においても非常に扱いやすい粘土であることを示している。また、安山岩起源の緑色片岩を母岩とするヤップの粘土には含まれない石英が含有されていることから、ファイスから出土した土器片の薄片分析を行えば、比較的簡単にヤップ産の土器とパラオ産の土器とを区別することが可能であることがわかった。
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