個別の社会における人びととモノとの関係の変化を探るため、モノに対する認識や行為に関するジェンダー、文化、国家間の相違に関する文献研究をおこなった。ポスト社会主義社会におけるモノの生産、利用のあり方を相対化するために、ユーラシアにおける考古学の成果を博物館収蔵資料と文献で把握するとともに、現代日本の物づくりの現場をフィールドワークすることで伝統的な技術の継承と革新について考察した。 具体的には、21年4月に札幌の七宝焼き職人のもとで銀とガラスの性質と扱い方を参与観察した。5月に交通事故に遭い行動が不自由になったため7月まで休養した。8月から徐々に文献研究を開始した。日本の伝統産業としての七宝焼き生産の中心地である京都での原料供給、生産、流通と地域産業ネットワークのなかでの位置づけ等について文献を収集し、内容を分析、整理した。22年1月には、銀をはじめとする貴金属がそれぞれの性質に応じて身体の状態や人の運勢全体に作用するというモンゴルの信念について考察を深めるため、現代医療研究会に参加して、銀をはじめとする貴金属がモノの象徴的な力が身体におよぼす超自然的な力に関する資料を収集した。2月には畜産学の視点による家畜研究および地域に埋め込まれた家畜研究の最前線を把握するため、帯広畜産大学で研究打合せおこなうとともに同大GCOE主催のシンポジウムに参加した。3月には、グローバル経済の中心である東京における伝統工芸のあり方についてフィールドワークをおこなった。とくにジェンダーと血縁関係に注目し、技術の継承にかかわる価値観とその変化について資料を収集した。収集したデータの整理にさいして、これまで使っていたパソコンが故障したため、パソコンとソフトを購入した。
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