本研究は、平安時代後期から鎌倉時代、いわゆる中世前期、主に京都の貴族社会において制作された漢詩文について基礎的な研究を行うことを目的とする。従来の日本漢詩文研究は、大きく奈良時代から平安時代にかけての貴族による漢詩文、室町時代の禅僧らによる五山文学、そして、江戸時代の儒学者らによる漢詩文、という三つのピークを中心に進められてきた。それぞれは独立したものとして扱われ、それらをつなぐ試みは殆ど行われていない。本研究では、諸所に残る漢詩文資料を収集と漢詩文制作の実態についての整理の2つの作業を柱とし、以後の研究の基幹となるデータベース作成を目指して従来の研究の欠落を補い、当該期漢詩文全体の展望を可能としたい。
|