1、第一に、(1)~(4)の作業を引き続き行った。(1)ブラックストン著『イングランド法釈義』の本文中に無数にちりばめられている法律用語及び法概念を、その本文の文脈に即して抽出することで、著者本人による解説付の「法律用語・法概念集」の機能を果たす基礎資料を、順次補充しながら作成する。(2)『釈義』に対する19、20世紀の脚註・註釈書・実務手引書から、『イングランド法釈義』の行論上重要な引用先例に対して上記手引書等が付加する、最近の「類似判例」を抽出し、「引用判例の系譜」集を作成する。(3)代表的な法律辞典(law dictionary)における参照・引用例を(1)(2)から抽出し、一覧表化する。(4)英米におけるいわゆる重要判例の若干における、参照・引用事例を(1)~(3)から抽出し、一覧表化する。 2、英米法における時間(歴史)の要素の存在構造それ自体に関して考察し、特にアメリカ法制史学を、純粋に歴史学としての再構築することの可能性とその意義に関する考察を深めた。具体的には、19世紀のアメリカにおける訴訟手続の簡略化と、その実体法への影響のあり方を、特に不法行為法あるいは契約法の近代的生成あるいは変容の中に見、その姿を理論的に定式化することを試みる論文の執筆に取り組みつつある。 3、これと同時並行に、上記『釈義』が、従来の類書とは全く異なって、訴訟方式(forms of action)の体系ではなく、「権利rights」および「権利侵害wrongs」の体系で書き上げたことに着目し、具体的な法制度の展開とのかかわりに注目して、今後のさらなる研究のための観点を整理しつつある。
|