研究概要 |
中世盛期ドイツにフランスのシャテルニー権力に対応する城主支配権が存在したかどうかを,ライン河流域の城塞について究明するごとを平成19年度の研究目的とした。先ず,フランスのシャテルニー権力の内容をなす権利や権限は,(1)荘園領主権ないし直轄領,(2)軍事罰令権(軍隊動員権と城塞夫役要求権),(3)裁判権(流血裁判権の意味での高級裁判権または下級裁判権),(4)保護権力(財産保護権と人格的保護権)である。このような内容をもつシャテルニー権力は,ライン河下流域に関して,ヒュルヒラートHulchrath,ローテンベルクRothenberg,シナSchinna,アスペルAspel,ニュルブルクNurburg,メルスMoers,リートベルクLiedberg等の各城塞の城主権力について確認された。次に,中部ライン領域に関し,コーベルンKobern,ナッサウNassau,シュタインハイムSteinheim,エプシュタインEppstein,ブラウバッハBraubach,ボムブルクHomburg,ヴィートWied,オルブリュブックOlbruck,クレーベルクCleeberg,ホイゼンシュタムHeusenstamm等の各城塞の城主権力がシャテルニー権力として把握できることを解明した.ライン河上流域について,シュヴァルベックSchwalbeck,フリーデブルクFriedeburg,ヴィンツィンゲンWinzingen,ヴォルフェスベルクWolfsberg,エルムシュタインElmstein,ヴィースロッホWiesloch,フォイツベルクVbitsberg,ガーンシュタインGarnstein,ホーホエッパン'Hocheppan,カステルルートKastelruth等の各城塞の城主権力がシャテルニー権力として捉えられるべきことを究明した。要するに,ドイツのライン河流域の全域について,フランス型のシャテルニー権力が存在したことを究明することができた。一部このような成果を基礎として,目下拙著の出版が計画されている。
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