平成19年度には、中世盛期にライン河中流域の32の城塞について、その周囲に形成された城主の支配権がフランス型のシャテルニー(城主支配圏)として把握できることを明らかにした。平成20年度には考察範囲を拡大し、その他ドイツの各地域にこのようなシャテルニーが存在したことを試行的に解明した。この研究成果はドイツと日本の歴史学・法制史学において初めて獲得された学問的成果であるだけでなく、11世紀から13世期までの中世盛期を歴史的にシャテルニー段階として措定するための基礎になるという学問的意義をもつ。以下の城塞が、20年度の研究成果として明らかにされたシャテルニー城塞の一端である。またこの研究成果は下記の拙著の中に取り込まれた。なお括弧の中の言葉はシャテルニーを意味する史料上の用語である。 ライン河下流域(北西ドイツ):ヒュルヒラート(terra)、ローテンベルク(iudicium)、シナ城塞(territorium)、ニュルブルク城塞(dominium)、メルス城塞(iurisdictiones)。ライン河上流域(南西ドイツ):ヴィムプフェン城塞(districtus)、バルスハイム城塞(dominium)、エーレンシュタイン城塞(dominium)、ライヘンベルク城塞(iurisdictiones)。南部ドイツ:フリーデブルク城塞(iudicia)、ヴィンツィンゲン(iudicia)、ヴォルフェスベルク城塞(iudicia)、エルムシュタイン城塞(iudicia)、ヴィースロッホ城塞(iudicia)。南東ドイツ:アプバッハ城塞(districtus)、ランツフート城塞(iudicium)、ローゼンハイム城塞(districtus)、トゥロストベルク城塞(iudicium)、クーフシュタイン城塞(iudicium)。中東ドイツ:グリュンベルク城塞とフランケンベルクの両城塞(Iudicia)。最後に、中部ドイツ:リーベンブルク城塞(districtus)、ナウムブルク城塞(iurisdictiones)、ヴィルデンベルク城塞(iudicia)、シャルテンベルク城塞(Comicia)。
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