本研究課題に着手した平成19年度以降、研究代表者は鎌倉幕府の発給した判決文書(裁許状)を主な対象史料として、主として「判決の内容」および判決が導かれるに至った際に用いられたことが考えられる「法的論理」の内容、あるいは具体的に示されている「裁判規範」の内容を示すところの、「判決」に関わる文言を抽出していくという作業を進めてきた。 今年度においては、昨年度までに終えた関東・六波羅・鎮西のすべての裁許状に関する予備的検討結果を素材として、その中に見出される「判決を導く際の法的論理」や「裁判規範」などに関する情報を整理し明らかにするために、データ・ベースを作成する作業に着手した。データ・ベースを構成する要素としては、「史料通番」・「史料番号(関東・六波羅・鎮西における史料番号)」・「裁許状の正文・案文の区別」・「裁許状記載の日付に関する西暦年表示」・「和年号月日」・「史料典拠」・「訴人」・「論人」・「訴訟の対象物=訴訟物」・「判決の内容」を設定している。本研究課題が最も注目する「判決理由」に関しては、「判決の内容」を記した欄において、甚だ大づかみな形ではあるが、「法的論理」あるいは「裁判規範」の区別を行った上で、それぞれの内容を示す「文言」に関して明らかにしている。 本来ならば、このような形で作成したデータ・ベースの内容の一部を、鎌倉幕府の「裁判規範」に関する実証研究における「中間報告」として、須く公表すべきところではあったが、整理作業になお追われることとなり、誠に遺憾ながら、当初の予定を果たせないままに終わっている。研究代表者は、研究課題として新たに「訴訟両当事者間で応酬される訴陳状の内容に関する検討」を設定しているので、この課題ともあわせて、作成途上のデータ・ベースをさらに精緻化すべく、史料分析を主とした作業をさらに進めていく予定である。
|