わが国最高裁における小法廷判決の実務を分析すると、コストのかかる大法廷判決を回避するために、独特の手法で判例変更を回避したり、あるいは特殊な方法的操作により違憲判決を迂回したりしている、という顕著な実態が浮かび上がる。これらのいわば屈折した裁判実務は、それ自体大きな問題をかかえているが、こうした判例変更回避や違憲判断回避の手法は、わが国最高裁の裁判実務を英米独の最高裁における裁判実務と対比するための有益なてがかりを与えてくれる。すなわち、わが国の裁判実務・法実務は、そうした比較研究の結果として、米国の膨張主義、英国の抑制主義、ドイツの折衷主義、という3つの周知のモデルと対比して、英国とドイツのちょうど中間にある独特のタイプとして特色づけることができる。
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