プーチン政権誕生後の「再集権化」の動向を、大領領の主要発言などをとおしてフォローするとともに、2003年地方自治法の翻訳作業に着手(初期段階)した。また、この間の変化を反映したと思われる文献の収集に努めた。これらの作業の結果、現在の地方自治法制の枠組みと連邦レベルのこの分野の政策の基本動向をフォローすることができた。 2008年9月には、1週間ほどモスクワを訪れ、連邦制研究の専門家との討議、モスクワ市役所を訪問しての資料(市販先では入手困難なもの含む)を入手するとともに、市当局の地域自治の政策担当者(局長クラスほか)へのヒアリングを実現することができた。地方自治と首都モスクワの関係は、1993年憲法(原鉱のもとでも紆余曲折を経てきており、このヒアリングを通じて、市内の10の行政管区とそこに含まれる100を超える地方自治体(区=ライオン)の位置づけや活動の動態の概要を確認することできた。 これらに加えて、03年地方自治法制の大枠と現に進行中の連邦制の再編課程、とりわけ少数民族の国家制の承認として意義づけられていた連邦構成主体としての自治管区の多くが州や地方(クライ)に統合されてきた経緯が明らかにされ、地方自治のあり方にどのような影響を及ぼしているかという新たな課題も確認することができた。民族的自治と地方自治の関連性と差異性を明らかにする必要が改めて生じてきた。連邦制レベルでの「集権化」が地方自治問題に新たな課題を投げかけているからである。研究全体の鳥瞰をしながら、細部のつめとそれをうめるべく資料の確認と改めての現地調査の必要性を感じている。
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