プーチン政権誕生後の「再集権化」の動向を、ロシアの政治体制の権威主義化と関連させつつフォローするとともに、2003年地方自治法の翻訳を仮訳ではあるが完成させた。また、引き続いて文献の収集に努めた。それらの成果は、21年度の成果として論文「『再集権化』過程のロシア国家」にまとめることができ、併せて、学会の分科会での研究報告にも反映させることができた。 2009年9月には、10日間ほどモスクワを訪れ、モスクワ市内の基層自治体の区役所を2箇所訪問し、区長(首長)、区の行政長官(執行機関の長)を含む区幹部との懇談を通じ、連邦構成主体であるモスクワ市との関係、区独自の管轄事項、財政にからむ諸問題への理解を深めることができた。また、市議会議員(与党)とも議論する機会をえて、議会および議員の立場からの地方自治の現状とそれにたいする認識(おおむね肯定的)を知ることができた。併せて、基層自治体の憲章や法規類についても入手の便宜が得られた。 これらの作業の結果、前年度のヒアリングを補完し、現在の地方自治法制の枠組みと連邦構成主体レベルのこの分野の政策の基本動向を、その一端ではあるが、フォローすることができた。当初の計画では極東の訪問を予定していたが、モスクワ市での調査の不十分さを補うことを優先させて、訪問地を変更したが、その成果はあったと考えている。現在のところ、垂直的関係を重視、すなわち集権化を企図しながら、権威主義的傾向を強め、西欧立憲主義の諸原理の受容とロシア的な伝統、非西欧的法文化の継承を「調整」しつつ、政治体制、ひいては憲法体制の安定(=「秩序」重視)を実現したのが、いわゆるプーチン体制であったと総括的な認識をしている。
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