研究概要 |
平成19年度は,環境公共利益訴訟の国際動向について鳥瞰図的に把握するため,予備的な外国調査と文献収集を集中的に実施した。 具体的には,第1に,EU地域の動向に関しては,7月にドイツの環境専門家委員会を訪問するとともに,ドイツ法務省で日本の環境訴訟の動向について報告し,EUおよびドイツの環境公共利益訴訟の最新状況について情報収集と意見交換を行った。 第2に,アジアの動向については,7月に台湾の司法院と最高行政法院を訪問するとともに,11月にシドニーで開催されたアジア太平洋NGO環境会議の機会を利用し,情報収集と意見交換を行った。 第3に,アメリカの動向については,カリフォルニア大学バークレー校を8月に訪問して資料収集を行うとともに,多くの環境公共利益訴訟をてがける環境団体よりヒアリングを行った。 これらの作業により,EUでは,環境公共利益訴訟が一般的な訴訟形態として定着しているが,ドイツのように,なおその拡大の是非をめぐり激しい議論がなされている国のあることを確認した。また,アジアでも,環境公共利益訴訟は浸透しつつあるが,その分野,担い手,機能等に関しては,かなりの多様性が認められた。さらに,アメリカのNGOは,国内問題に関し市民訴訟を活用するのみならず,最近では,アジア各国の訴訟にも,積極的にコミットしていることが認識できた。以上の成果については,論文として順次公表を始めたほか,弁護士会,NGOまたは行政主催の各種講演会で,情報発信した。
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