研究概要 |
平成20年度は,環境公共利益訴訟の最新の国際動向について把握するため,各種の国際会議に出席するとともに,国内の実務家(弁護士等)と日本の制度設計について意見交換を実施した。 具体的には,第1に,EU地域の動向に関しては,5月にEU本部で行われた環境司法アクセスに関する会議に出席し,EU各国の最新状況について情報収集を行うとともに,NGO,裁判官等と意見交換を行った。また,6月には,オーフス条約締約国会議に出席し,中央アジア,アメリカのNGOや専門家を含め,広く意見交換を行った。 第2に,アジアの動向については,4月に韓国環境法政策学会の招聘でソウルを訪問した際,韓国の専門家から情報収集を行った。また,5月に台湾で開かれた東アジア行政法学会に出席し,台湾,韓国の環境法の専門家と意見交換を行った。 第3に,アメリカの動向については,カリフォルニア大学バークレー校を8月に訪問して資料収集を行うとともに,現在環境訴訟を提起している環境団体よりヒアリングを行った。 これらの作業により,EUでは,環境公共利益訴訟が一般的な訴訟形態として定着しているが,団体訴訟,民衆訴訟等,各国の方式には多様性があることを確認した。また,台湾では,環境公共利益訴訟が導入されており,実際の訴訟の数は少ないが,訴権を背景にして,交渉による解決が行われる場合があることが認識できた。以上の成果については,論文として順次公表を始めたほか,弁護士会,NGOまたは行政主催の各種講演会で,情報発信し,日本の制度設計について環境アセスメント等を題材に具体的に検討した。
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