平成19年8月、独立行政法人経済産業研究所「経済社会の将来展望を踏まえた大学のあり方」研究会のメンバーとしてドイツ諸州における大学政策の動向について調査を実施した(ハンブルク大学、ミュンスター大学、エアランゲン・ニュルンベルク大学、フンボルト大学で実施)。また、平成20年3月に本科研費を使用して再びドイツで調査を実施した。これらの調査では、連邦制度改革を目的とした憲法改正により、連邦の大学制度に関する競合的管轄が廃止され、大学大綱法も廃止されることから、従来にもまして諸州における大学制度の多様化が推し進められつつある状況を確認することができた。ただし、方向性としてはドイツ型新公共管理モデル、すなわち新制御モデル(Neues Steuerungsmodell)に即した制度が形成されているという点で諸州の動向は共通している。平成19年10月12日、経済産業研究所において、上記の調査内容およびブランデンブルク大学法に関する連邦憲法裁判所決定につき報告する機会を得た。連邦憲法裁判所の決定では、新制御モデルを導入した同法の憲法適合性、とりわけ大学管理機関の強化、大学・教員評価の仕組み、学外成員からなる大学監事会(Hochschulrat)の合憲性が審査された。結論は合憲であったが、ブランデンブルクの場合、大学監事会の権限は、主に大学管理機関に対する助言である。他州の大学法では、監事会に強力な権限が付与されていることがあり、この場合、公権力の行使を行う主体としての監事会の民主的正統性の問題が生じる。したがって、なお、諸州の大学法の憲法適合性を精査する必要性があり、すでに、諸州の大学法を素材として多くの論考が公表されている。収集した資料をもとに、今年中にはドイツ大学改革の公法学的な検討に関する論考を公表する予定である。
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