フランスおよびトルコにおける政教分離の原則において国家の非宗教性「この語については「世俗主義」という俗称もある)と宗教的中立性とがいかなる関係になっているかを中心に研究した。両国において政教分離は国家の基本原則を構成するとともに、それに関する論議は今日きわめて活発である。だが、その論議の中心実定法から離れた政治的論議である。そのため、国家の非宗教性と宗教的中立性について法的な概念を捉えるのは現在かなり困難である。 それでも、政教分離に関するフランス法を詳しく分析すると、国家と教会の組織的な徹底した分離を前提としていることが分かる。その意味でここでは国家と宗教に相互の分離という意味が国家の非宗教性が考えられてきたといえる。しかし、今日宗教的自由の保障に重点をおいた宗教的中立性から政教分離を捉える傾向が強いことが分かる。他方、トルコでは、かつてイスラムが国家領域を支配してきたことから、国家を宗教から分離する意味での国家の非宗教性がその政教分りの中心を占め、宗教を国家から分離する、その意味で国家の宗教的中立性や宗教的自由の保障はきわめて弱い。しかし、それでも宗教え的少し数者に対して宗教的自由を保障する傾向が強まってきている。 このようにして、両国では国家の非宗教性の意味または重点が異なるとともに、国家の非宗教性を前提として国家の宗教的中立性に展開しているようですある。 また、フランスおよびトルコにおける国家の非宗教性の確立の前にアメリカ合衆国及びメキシコにおける政教分離に関する憲法原則があった。このうちわが国の憲法学はアメリカ合衆に関する研究には、比較的熱心であったが、メキシコに関してはそうではなかった。フランスおよびトルコにおける国家の非宗教性をさらに究明するためにも両国とメキシコを比較する必要性を感じる。
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