フランスにおける国家の非宗教性に関する憲法原則であるライシテの原則に関する研究を前年度に行った。当該年度には、前年度に続きトルコおよびわが国における政教分離を、国家の非宗教性および国家の宗教的中立性という2つの観点から分析するとともに、比較対象国としてメキシコにおける政教分離も少し調査した。 トルコについては、その政教分離の憲法原則であるライクリッキの原則を研究対象とし、同原則の成立背景、関連する憲法規定、その関連法律規定、主として憲法裁判所判例および学説に示される憲法規定の解釈・適用、同原則に関する論争点等から、国家の非宗教性および国家の宗教的中立性を分析した。この結果、トルコにおける政教分離原則においては、これまで国家の宗教的中立性はあまり強く認識されず、国家の非宗教性に重点が置かれてきたが、最近国家の宗教的中立性を確保する動きが出てきたことを解明することができた。そこで、この研究成果を発表することができた。わが国については、神道指令において国会の非宗教性および国家の中立性がどのように現れているかを分析し、それが日本国憲法における政教分離規定およびその解釈適用にどう続いているかを考察した。だが、フランスおよびトルコの2国とわが国の状況との比較はまだ十分には分析できなかった。また、わが国に関する研究成果の発表はまだ十分でなく、これから行う予定である。メキシコについては、その憲法に関する研究資料を集めることができ、これから研究に着手する。
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