今日、国際社会において、国際機構が果たすべき役割は多岐にわたっているものの、国際機構の国際責任に関する研究はさほどの進展を見ていない。そこで、本研究は、従来の国際機構法からのアプローチに加え、それ以外の国際法分野からのアプローチ、さらには、行政学的アプローチを含む新たな分析枠組みを提供することにより、混迷する国際機構の国際責任の問題の一端を明らかにすることを目的とする。 1.組織面における分析 (1)国連事務局改革に見る責任とアカウンタビリティーの研究(黒神) 国連事務局改革に伴う行政裁判所改革について研究した。6月に日本国際連合学会にて研究報告を行った。 (2)行政機構の国際的比較研究(築島) 本年度は日本の官僚制に焦点を当て、特に、人事形態について、欧米の行政組織との比較や日本社会におけるその他の組織との比較を通じて、日本の官僚制のあるべき姿を検討した。 2.実体面における分析 (1)国際機構の内部的責任に関する研究(黒神) 国際機構内部に生起する責任に関し、本年度は主要文献の収集を行った。 (2)国際機構の対外的責任に関する研究(竹内) 本年度は、域外適用法理を梃子にして管轄権行使の法構造について検討した。特に、これらの管轄権行使と、処罰義務に関する領域国の国家責任およびICC、 ICTY、 ICTRなどの国際機構の処罰権限との諸関係について考察した。2月に岡山大学国際共同セミナーにて研究の一部を報告した。 (3)国際責任の認定に関する研究(玉田) 本年度は、国際機構内の裁判機関(国連行政裁判所等)と一般的な国際司法裁判の性質の比較検討を行った。これらの知見を前提としつつ、国際裁判における既判力原則や判決理由記載義務といった諸原則の分析を行った。国際法学会2007年度春季大会(2007年5月12日)にて、この研究成果の一部を報告した。
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