本研究は、国際・国内武力紛争に適用される戦争犠牲者保護の研究の一部として、近年の武力紛争(とくにイラク戦争)において犠牲の目立つジャーナリスト(報道記者、フリー・ランサー、カメラマン、従軍記者等を含む)の法的地位と保護について、1949年ジュネーブ諸条約および1977追加議定書手続を中心とする国際人道法の観点から検討し、保護のあり方を探ることを目的としている。本年度は、国内外の関連文献、資料の収集のほか、赤十字国際委員会から武力紛争の捕虜や抑留者(ジャーナリストを含む)の待遇等に関する情報や資料も得た。さらに、万国国際法学会(Institut de Droit International)の「武力紛争時における公認されたジャーナリストの国際的地位、権利および義務」の問題を検討する委員会の一員として、ラポトゥールのクエスチョネアーに対して意見を送付し、同学会サンチャゴ(チリ)大会の折には、この委員会の会合でこの問題の検討を行った。この問題は、紛争地域で取材活動を行うジャーナリストが敵対行為の犠牲になりやすく、他方、その報道が人道法違反などを明らかにする社会的役割を担うことから提起される。検討すべき課題の中には、国際人道法の保護対象とすべきジャーナリストの種類を公認された者に限るかより広くフリー・ランサー等も含めるかという範囲の問題およびジャーナリストに文民としての通常の保護を与えるかあるいは(医療要員や看護要員のように)特別保護を与えるべきか(識別標識を含む)という保護内容の問題がある。
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