本課題の中間成果として「[提言]リサイクル等に係る共同の取り組みに関する独占禁止法上の指針」(『公正取引』683号)なる論説を発表した。その骨子は、およそ次の通りである。産業廃棄物の処理・リサイクル事業に係る国内移動は、従来「自区域内処理の原則」を建前としてきた。しかし、産業廃棄物の発生地とその処理・リサイクル施設が偏在して同事業の展開に支障をきたしていたため、平成14年にリサイクルポート制度が発足した。同制度は、(1)国土交通省から指定されたりサイクルポート(全国で21港)に海上輸送で大量の再生資源を運ぶ、(2)リサイクルポートにリサイクル関連施設を集中して副産物の利用等において企業間で関連を持たせる、(3)リサイクルポートにリサイクルした原料を運び出す拠点としての役割を持たせるというものである。かようなリサイクルポートの展開は、産業廃棄物の広域処理を前提とするもので、競争秩序に与える影響が問題となる場合があることを指摘した。 一方、公正取引委員会は、かつて「リサイクル等に係る共同の取り組みに関する独占禁止法上の指針」(以下、「指針」という)を公表し、廃棄物等の発生抑制、回収・運搬、リサイクル事業の中で行うことが予想される独禁法上の考え方をまとめた。この「指針」が公表されて7年も経ち、産業廃棄物の処理・リサイクルに係る事情は大きく変化している。そこで、「指針」の早急な見直しを行うことを提言し、「指針」と独禁法との整合性についても今後の検討課題であることを指摘した。 本論説は、課題研究の骨格になる研究で、本課題の成果に寄与するものである。
|