本課題の成果として、2009年3月に論文「競争政策と環境政策の相互補完関係の構築に向けて(1)産業廃棄物処理・リサイクル事業を題材として」(『愛媛法学会雑誌』35巻1・2・3・4合併号)を発表した。現行の産業廃棄物処理・処分に係る環境政策は、産業廃棄物の発生・排出抑制(入口規制)を行うことなく、もっぱらリイサクル(出口規制)を中心としたものであり、根本的な環境政策となり得ないことを指摘した。すなわち、(イ)循環型社会形成推進基本法を中心とした一連の法体系は、すでに産業廃棄物になったものをどうするかというリサイクルを中心とするものであること、つぎに(ロ)上記法体系に基づく行政による法運用の中で産業廃棄物の広域移動を取り上げ、リサイクルポート制度の導入は、(イ)の法体系と矛盾を生じさせる(廃棄物処理法で求められているマニフェスト制度に矛盾する)のみならず、都市部で処理・処分できなくなった産業廃棄物を地方産業の活性という美名の下にそれを地方に分散させることを実証的研究によって明らかにした。この研究は、最終的に競争政策を伴った産業廃棄物の生産・排出抑制(入口規制)という観点から事業者に産業廃棄物の排出に対して課徴金を課すこと、産業廃棄物がメーカー⇔販売業者⇔消費者という関係で処理・処分される物流関係を構築すること、行政情報の積極的な開示を図ること等を中心とした、提案を導くことへの重要な作業と位置付けることができる。 なお、引き続いて上記テーマ(2)を執筆しており、今年度中に完成することにしている。
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