本研究の目的は、我が国における戦後社会福祉法体制の大きな転換点となった平成12年の介護保険法施行と社会福祉事業法全面改正による社会福祉法体制への以降において導入されたサービス苦情解決の法理念、法制度、法理および機能を検討し、その意義と課題を明らかにすることである。 平成19年度は、上記の研究目的を達成するための作業として、命令や指針及び実施機関の内部規程など法制度の詳細にまで立ちってその具体的姿を把握するとともに、国保中央会および全国社会福祉協議会の資料を入手・分析するとともに、特に、熊本県国保連が把握している苦情処理事例および相談事例の収集・分析を行った。 成果としては、苦情処理のレベルに上がる前の相談事例が極めて多く、その大半は相談員の助言によって「解決」されていること、相談事例の内容は多岐に亘っており、必ずしも苦情処理に結びつかないものが多いこと、相談員の配置と力量が極めて重要な要素であること等が明らかになった。その点で、社会福祉・介護サービス苦情解決制度がその目的を適正に達成するには、この相談体制の整備と機能が極めて重要な前提である。苦情処理事例では、介護サービスに含まれる医療についての取り扱いが一つの大きな課題であること、また指導・助言に従ってサービス改善を行うかどうかは、事業者側の任意の努力に委ねられているが、指導・助言の実効性確保のための方法をいかに確保するかが課題となっている。所管行政庁への通知は、社会福祉法に根拠規定があるが、介護保険法ではこの点が明らかではなく、制度改正が望まれる。
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