沖縄県の若年者雇用対策について、政策文書をもとに整理すると、若年失業者の多いこと、新卒者を中心とする若年者が狭隘な地域労働市場における供給を過剰にしていることが、1970年代後半から認識されるようになり、1980年頃には、需要創出のための政策(観光関連事業等の振興、既存企業の育成、新規企業の誘致を通じた雇用吸収力と付加価値の高い産業構造の実現)と上質なマッチングのための政策(県外就職の促進、定着指導の強化、高学歴化に対応した職業訓練・職業指導・職業紹介体制の充実)が政策課題として掲げられるようになったこと、この状況認識と課題設定は、基本的には現在に至るまで維持されていることが明らかとなった。 ヒアリング調査と統計資料からは、地域労働市場が労働供給超過であり、そのことが労働条件の低下も招いていること、学校から雇用への間断なき移行という雇用慣行が弱いことなどが再確認された。とくにヒアリング調査において、地域雇用対策が国からの地方への事業委託という形で行われるようになっていること、その受け皿づくりをめぐっては行政主導型と労使主導型の対立がみられることが明らかになった。 比較法的な検討としては、若年者失業率が高いフランスを中心に検討した。フランスでは、労働市場の二極化の防止あるいは労働市場の現代化という観点から、とくに若年者の就職支援のための特別な個別的支援策が議論され、失業保険の受給資格を満たさない場合の定額手当の新設などが行われている。これらの施策は所得保障を含めた制度改革によって円滑な職業的移行を積極的にサポートしようとするものであり、ヨーロッパの労働市場改革で重視されているフレキシキュリティ路線の一形態として位置づけることができる。日本の若年者雇用対策の基本的スタンスと考えられるミスマッチ論との対比で、またもともと労働市場の流動性が高い沖縄における地域雇用政策を考えるうえで、有益な視点を提供するものと考える。 ヒアリングや資料収集等は昨年前半でひととおり終えたが、昨年後半の世界同時不況により雇用情勢が急速に悪化した。沖縄県の雇用問題、とくに若年者雇用問題の動向については、新聞等を通じてフォローを行ったが、今後とも注意して情報を収集していきたい。
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