2008年度の研究実積は、1.「企業システムの変化」との関連におけるフレセキュリティー、2.比較法研究に関わる部分、3.法源論的検討に分けることができる。 1.「企業システムの変化」との関連におけるフレセキュリティー問題については、近年における企業システム・組織の変化にともなって生じている様々な労働法上の問題を念頭に、近代市民法の基礎的構成原理(法人格・所有・契約)に遡及した問題把握によって、フレセキュリテーの実現が可能である旨の知見を獲得し、これを2008年度秋の日本労働法学会における学術総会において発表する機会を得た。 2.比較法研究に関しては、当初予定していた欧州訪問調査が、家庭的事情(第三子の出産)により実施できないという事態が生じたが、幸い、ドイツからはケルン大学のマルテイン・ヘンスラー教授、オランダからはアムステルダム大学のエーベルト・フェアフルプ教授が来日されたのを機会に、集中的なヒアリング調査・共同研究の機会を得ることができた。とくにドイツにおける労働契約法をめぐる議論にフレセキュリティー問題への深い関心が示されていることが明らかになった。 3.法源論的検討においては、労働法における強行法性の問題を検討するなかで、近年有力に主張されている手続き保障論の意義と問題点を明らかにし、労働法におけるフレセキュリティーと深く関連する強行性のグラデーション問題を解明する手がかりを得た。
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