本研究は、アジア労働法について国際公正労働基準の観点からも研究を進めて来た研究代表者が、「ILOの技術協力活動と法整備支援-インドネシア・カンボジア労働法制を素材に」というテーマのもとで、これまで十分に意識されてこなかった、労働法分野における法整備支援のあり方について、2カ国を対象として、本格的な研究調査を行おうというものである。平成19年度は、次の3点について研究を進めることができた。 第一に、本課題の前提として、ILOの技術協力活動、インドネシア労働法制、カンボジア労働法制について、日本にて集められる文献を網羅的に集めて、それを分析する作業を行った。特に、労使関係紛争処理手続に関する研究を進化させることができた。 第二に、アジア労働法について先駆的な業績を積み上げてきている香川孝三教授(大阪女学院大学)と相談し、アジア労働法研究会の再開による各会員との議論を通じて、上記作業に関するレビューを受けた。その結果、「東アジア諸国における労働法整備支援と労働契約法制の展開」という共同研究開始に結実することができ、アジア労働法の研究の進展につなげられた(平成20年度基盤研究(B)として認められた)。 第三に、選定した2カ国の海外調査を行い、日本ではなかなか入手ができない資料を入手するとともに、各司法機関、行政機関、ILO支局、各国政府に派遣されているアドバイザー、各国政府機関に対するヒアリング調査を実施し、その結果、各国の労働法制と法整備支援活動の実態的側面、各種課題について明らかにした。以上を通じて、ILOバンコク支局、インドネシアのジャイカ専門家とのネットワークを展開することもできた。 平成20年度は、成果報告の公表、海外調査の補充、海外研究者によるレビュー等の活動によって、さらに研究を進展させることを考えている。
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