アジア労働法制は、外的にはグローバライゼイション、内的には、社会主義経済から市場経済への経済制度の移行、権威主義体制から民主主義体制への政治体制変換等の環境変化のもと大きく変容しつつある。本研究は、アジア労働法の急激な変容に大きな役割を果たしてきており、労働法分野において十分に受けとめられなかった、「法制整備支援」という観点から、アジア労働法を研究するものである。具体的には、これまで国際公正労働基準の観点からも研究を進めて来たことを踏まえて、「ILOの技術協力活動と法整備支援-インドネシア・カンボジア労働法制を素材に」というテーマのもとで、これまで十分に意識されてこなかった、労働法分野における法整備支援のあり方について、本格的な研究調査を行ったものである。 本研究の成果としては、まず、アジア労働法研究において、これまで必ずしも十分に研究されてこなかった、インドネシア労働法制、カンボジア労働法制について、最近の状況を含めて明らかにすることができた。次に、両国の状況を通じて、アジア労働法の近年のダイナミックな「変容」とその「要因」を探る素材を得られることができた。三番目に、ILOの技術援助活動(テクニカルコーポレイション)について、実証的な研究を行うとともに、国際公正労働基準設定・実現・促進の観点から理解し、分析することによって、ILOの「機能」の「変容」について分析を行うことができた。最後に、ILOの技術援助活動を、「法整備支援」という観点から再構成することにより、労働法整備支援の課題に関する理論的分析の素材を用意できた。現在、これらの成果公表に向けて幾つかの論文を執筆中である。
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