研究概要 |
研究初年度である平成19年度は,当初の研究計画に修正を加えつつ研究を進めた。また,今年度は文献調査を行い,聞き取り調査等については実施しなかった。具体的には,収集した文献・政策文書・統計資料等に基づいて以下に関する検討を行った。 初めに,わが国における祖父母と孫をめぐる諸制度の体系を検討した。また「保育者としての祖父母」が,わが国においてどのような形で議論されてきたのかを明らかにするため,孫育児に関するわが国の先行研究を収集し分析した。 次いで,諸外国の孫育児の状況について資料等の収集と分析を行った。その際、当初の研究計画にしたがって,英国・アイルランド・オーストラリアを対象国に設定した。あわせて,これらの諸国における祖父母と孫を取り巻く文化・社会的状況の検討を試みた。 英国については,インフォーマル・ケアの(ブレア政権以降の)社会政策上の位置づけを明らかにするとともに,特にひとり親家庭への重要な就労支援であるワーキング・タックス・クレジットのあり方について検討した。オーストラリアとアイルランドについては,資料収集と分析の過程において,両国では近年いわゆるキンシップ・ケアの重要性が認識され,孫を監護養育する祖父母の問題が議論されていることが判明した。 この問題は,育児と就労の両立支援とは違った視点から,次世代育成支援策のひとつと位置づけることが可能であると考えた。また,わが国においても現在進行しつつある家族関係の変容に伴い,今後,この問題が浮上する可能性があると判断した。 そこで当初の研究計画に修正を加え,当初は盛り込まなかった「養育者として孫育児を行う祖父母に対する支援策」についても研究対象とすることにした。なお,研究計画に修正を加えたこともあり,研究課題に関する体系的な考察はまだ十全とはいえない。そのため,研究成果については平成20年度に順次,発表することにした。
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