裁判員裁判が平成21年5月21日以降に起訴された事件を対象に実施されることになり、本研究は裁判員裁判における立証活動の理論的・実証的研究を研究課題名としていることに明らかな如く、単に理論的のみならず現実の裁判員裁判に関与することを通じて、実際に生じる裁判員裁判における立証活動の問題点を発見し、その理論的な解決策を模索するというものであった。そのためには、研究者自身が現実の裁判に弁護人として関与することが必要である。特に、被疑者段階から弁護人として関与し、公判前整理手続についての問題点を摘出することは、極めて困難である。というのは、被疑者段階の弁護活動及び公判前整理手続の弁護活動が、公判における弁護活動の基礎を形成しており、裁判員裁判の公判における立証活動と密接不可分に結びついているからである。そこで、研究者は、現実の裁判員裁判に弁護人として関与する機会をうかがっていたが、平成21年には、新潟地方裁判所においては、1件もの裁判員裁判が実施されなかった。そこで、研究者は、平成22年8月3日に東京地方裁判所で行われた裁判員裁判等、他の裁判所で行われた裁判員裁判の情報収集を行うと共に公判前整理手続における弁護活動の課題について研究を行った。また、イギリスの証拠法の研究を行った。 平成21年10月に、研究者に対して、新潟県弁護士会から裁判員対象事件の弁護の照会があったので、弁護を引き受けることとした。当該事件における被告人は、外国人であり、かつ前面否認事件であったために、裁判員裁判における立証活動の理論的・実証的研究にふさわしいと考え、それ以降は、当該事件の弁護を通じて研究を行った。
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