研究初年度にあたる今年度は、とくにイタリア、フランス、ギリシャの司法取引に関する関係文献・資料の収集に重点をおいて、研究を遂行した。 イタリアおよびフランス関連の文献・資料については、刑事実体法・手続法一般および司法取引に関する最近の文献で、とりわけ日本国内では入手不可能なものについて、収集を進めた。他方、ギリシャ関連の文献・資料については、平成19年7月18日から22日まで、アテネに赴き、専門家のアドヴァイスを得ながら収集を行なった。現在も、これらの文献・資料の収集を継続中であるが、同時に、既に入手済みの文献を講読・分析を徐々に進めている。 これら欧州諸国の関連文献の収集と平行して、わが国の刑事手続における司法取引的手法に関する学説・実務の動向を把握するための手がかりとするため、とくにおとり捜査の手続的問題に関する研究を行い、阪大法学にその成果の一部を公表した。おとり捜査は、犯罪の組織化・隠密化・巧妙化に対する手続的な対抗手段という意味で司法取引と共通点をもつが、他方で、これと異なり、特別な立法措置を要することなく行なうことが許されると考えられており、現在の法制度の枠組内での許容性の要件が議論されている。この問題を検討しておくことは、本研究がその目的の一つとして確立を目指す、わが国における司法取引の導入の是非・条件を検討するための理論的枠組を考察する上で重要な意味をもつものと考えられる。
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