研修2年目にあたる今年度は、まず、昨年度に開始したおとり捜査の手続的問題に関する研修を継続・完了し、その成果を、「『おとり捜査』について(2)(3)(4)・完)」として、「阪大法学」に掲載し、公表した。おとり捜査は、「司法取引」それ自体には属さないが、犯罪の組織化・隠密化・巧妙化に対する手続的な対抗手段という意味で司法取引と共通する問題であり、わが国における司法取引の導入の是非・条件を検討するための理論的枠組を考察する上で重要な意味をもつものと考えられる。本研究成果においては、おとり捜査の手続的問題をめぐる従来の議論を再検討するとともに、新たな角度から光をあて、この種の問題を考えるにあたっての基本的な検討枠組を提示した。 他方、外国法の研究に関しては、昨年度に引き続き、とくにイタリア、ギリシャの司法取引に関する関係文献・資料の収集を行った。今年度は、とくにギリシャの司法取引関連の情報・文献・資料に重点をおき、その一環として、平成20年7月22日から8月4日まで、アテネに赴き、図書等の資料を収集するとともに、ギリシャ刑事手続一般の運用状況および司法取引の一般本な状況について、とりわけ実務家を中心として情報・意見の聴取を行った。
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