本研究は、代表者が単独で3年間で実施するもので、主として図書資料・公刊情報を利用するものである。本年度は最終年度の3年目であり、当初の実施計画を若干変更しつつ、以下の3系列の研究を実施し、研究課題に適合的な成果の公表を開始した。 11980年度中期以降の法益概念史研究を継続すると共に、論文化の準備を進めたが、不法実質論に由来するバイアスが概念規定努力を謂わば拡散させている一方で、危険(危殆化)犯論も概念規定を確定せぬままに展開するという状況が急激に拡大してきた為、対象資料が質・量的に著しく増大し、なお分析・論文化は終了するに至らなかった。完成を急ぎたい。 2主として執行/保護手法としての刑事法という観点から昨年度に研究活動を再構成したEU経済刑法の研究は、企業組織体活動の制御(コンプライアンス)における各種手法の法理論的意味及び適正さの批判的研究として継続され、企業文化論との結合を通じて、組織体刑事責任論として展開され得ることが確認できた。本年中に成果の一部を論文として発表後、取り纏める予定である。 3経済刑法の理論学的な視座を再構築し、現実に我が国の競争刑法や資本市場刑法等の解釈適用論への提言を行う、という最終目標に向けた準備作業として、昨年度より実定法解釈論・判例動向の再解析を開始し、独禁法罰則及び会社法罰則について成果の一部を論文として公表した。今後も可能なものから継続的に公表していく予定である。
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