今年度は、研究課題である「同意無能力者および限定的同意能力者の同意の有効性」の問題に関して、前年からの継続作業として文献・資料の収集、調査を行い、一定の収穫を得た。 本年度の経過としては、まず、昨年5月にハレーで行われた医事法大会に出席し、現地研究者の報告・発表を通して当該問題に関する理解を深め、多くの示唆を得ることができた。8月末から9月にはゲッティンゲン大学を訪ね、昨年も同様にその協力を得たドゥトゥゲ教授に再び話を伺い、課題について検討を重ねた。なお、同教授は、その後本学の客員教授として9月末より3週間を日本にて過ごしているが、その滞在中、筆者は、標記テーマに関して共同研究を行う機会を得ることができた。さらに、今年3月には、再びドイツに滞在し、その間、ドゥトゥゲ教授をはじめ、同じゲッティンゲン大学のシュライバー教授、アウグスブルク大学のロゼナウ教授、ギーセン大学のヴォルフスラスト教授ならびにグロップ教授らを訪ね、これらの教授陣から、当該問題に関する造詣の深い諸見解を得るに至った。これら、本年度中に得られた諸資料と昨年中に得た各調査活動の結果を基に、今後は、来年度にむけて、また、最終的な総括にむけて、本研究テーマにおける筆者の立場の方向付けを行って行きたいと考えている。 なお、以上の研究課題にかかる研究活動と並行して、昨年6月には、本テーマとも関連する事柄であるところの安楽死(医師による自殺幇助)の事例における医師の責任の問題に関して、ドイツの理論状況を紹介しつつその可罰性について考察し、これを論文に発表した。あわせて記す次第である。
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