今年度は、研究課題である「同意無能力者および限定的同意能力者の同意の有効性」の問題に関して、前年度、前々年度からの継続作業として文献・資料の収集、調査を行い、得られた結果、収穫をもとにまとめの作業に入った。 本年度の経過としては、まず、4月上旬から約2週間のあいだ中央大学の客員教員として来日したギーセン大学のグロップ教授、ならびに、ほぼ時期を同じく早稲田大学の客員教員として来日していたアウグスブルク大学のロゼナウ教授を迎えて『承諾無能力者・限定的承諾能力者の承諾の有効要件』と題するシンポジウム(公開講演会)を開催し、課題研究活動の成果の一つとすることができた。5月には、ハンブルクにて開かれたドイツ刑法大会に参加し、研究者の報告・発表を通して最新の刑法問題に関する理解を深め、また研究課題についても多くの示唆を得た。9月ならびに明けて3月には、ゲッティンゲンにて、同大のシュライバー教授、ドゥットゥゲ教授との意見交換、検討作業を通して、研究課題に関するドイツでの最終的な調査、資料のまとめの作業を行った。 以上の研究活動については当これまでの調査・研究の結果を整理・統合し、本課題研究の成果の集大成とするべく、具体的には、4月のシンポジウムにおけるロゼナウ、グロップ両教授の講演における現状についての報告と指摘、各参加研究者と両氏との討論内容をベースとして、この3年間で得たドイツの法学者、医学者の当該問題に対する対応について、そしてまた、今後具体的にどのような課題をどのようなアプローチで検討するのか、等について、これらを包括的にまとめる形で、現在、活字化をすすめているところである。 なお、上記の研究活動と並行して、5月には『刑事法学における現代的課題』と題する先に著した「『遺伝情報』及び『承諾』と『人間の尊厳』」、「医師による自殺幇助の可能性について-ドイツの理論状況の紹介-」等を集録した『刑事法学における現代的課題』(日本比較法研究所研究叢書77)を上梓したことを併せて記する次第である。
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